1999年6月15日 後楽園ホール  FMW


 当初、空席が目立ったものの、試合開始後、時間を追うごとに埋まってゆき、 最終的にはなんとか満員マークを付けられる入りに。試合開始前、冬木と荒井 社長の新発表の時間が用意されていたが、冬木のテーマ曲がかかった途端、ハ ヤブサがリングに飛び込む。マイクを取って、「冬木、腹を空かせてきたか?  うまいドッグフードを用意してきたぞ! 好きなことをやれ。お前が何をや ろうと、俺達はFMWを取り戻す!」。ハヤブサのマイクに場内が沸く。
 この出来事で、冬木と荒井社長の挨拶は第1試合の後に行われることになっ た。

第1試合 リッキー・フジ VS 南条隼人

 若手の進歩を見られるわけでもなし、本当にどうでもいい感じの第一試合。
 試合開始早々、東側からロックンロールコールが起こる。キックを乱打して先 手を取った南条は、グラウンドでリッキーの腕を攻め、早いタイミングでケブ ラーダ(ハヤブサのいるマットで、君が使うなよ)、ミサイルキック、アラビ アンプレス、ハリケーンドライバーと大技を畳み掛ける。リッキーのカミカゼ で叩きつけられるも、最近多用している腕ひしぎでリッキーを追い込み、これ からというところで飛び出したのは、驚くべきリッキーのフランケンシュタイ ナー! これ一発で南条はフォール負け。いや、本当にリッキーのフランケン とは意表を突かれた。ハヤブサと比べれば、そりゃ雲泥の差だけど、こっちの 予想を裏切って出したことに意味があるってもんで。
 南条はまだなんか危なっかしい。かつてはリッキーも見ていてハラハラする 選手だったけど、今ではすっかり落ち着いた試合運びを見せるようになった。 何よりも南条がいけないのは、自分のイメージを作り上げるセンスがないこと で。ハヤブサよりもずっと小さな選手が似たような技をより下手に決めてる。 それじゃ、ここにいる意味がないだろう。関節技の達人になるとか、丸め込み ナンバー1とか、何か考えて。

今回は写真撮りにくい位置でしたこれもエンターテイメントか


第2試合 フライングキッド市原 VS 邪道

 冬木と荒井社長の発表はハヤブサが8月25日の札幌を最後にマスクを脱ぐ というもの。会場には、一部から拍手と、大部分のブーイングが渦巻く。勝手 な発表をされたハヤブサが飛び込んでくるが、両者はリングを逃げ、ハヤブサ はマイクを手に取るが、やるせなさで何も喋れない。そんな中で、第2試合が 続けざまに始まった。
 話題のセクシータレント、若菜瀬奈とやら(知りません。AV、見ませんか ら。私は実践が好きなので、他人のなんて見てられません)はなんと市原のマ ネージャーに就任。仲良さげに肩を組んで入場。「邪道、ぶっ殺してやれ!」 とモテない男達のやっかみの声が起こる。
 市原と邪道がリングで戦いを繰り広げている間、冬木がリングサイドに姿を 現し、瀬奈に迫ってゆく。健気に口答えする瀬奈。客もみんなそっちを見つめ ている。フランケンシュタイナーを狙った市原、邪道にパワーボムに切り返さ れて、あえなくフォール負け。2分かからなかったか。介抱する瀬奈に邪道が 「そんな弱いクズより俺とくっつけ。良い思い、いっぱいさせてやるぞ」とい うようなことを言う。しかし、瀬奈は「あたし、優しい人が好きだもん!」。 市原には「弱いけど、モテる男」というプロレス界では新しいキャラを確立し てほしい。っていうか、瀬奈という付加価値が付いたことで、市原は明らかに ランクアップしたね。このまま、市原+瀬奈VS邪道の抗争を期待したいもの だ。ちなみに瀬奈ちゃんのパンツがいっぱい見えました。

 あと、このようなシチュエーションでは、案の定「脱げ!」「犯せ!」とい うようなヤジが飛び交ったのだけど。私はそういう品のない、面白くもないこ とを言う人間が死ぬほど嫌いなので。よほど恵まれない人生を送っている方々 なんだろうと、心から同情いたします。

市原でも、生きていればいいこともあります瀬奈、危うし! 気持の悪いデブが迫るこれじゃ負けても幸せですね


第3試合 大矢剛功、保坂秀樹 VS 佐々木嘉則、山崎直彦

 大矢への声援が多い。この辺に、観客のエンターテイメント路線への反発が 現れているような気がするが。やはり今日の興行の中で、一番普通のプロレス ぽかった試合。
 若手コンビが大健闘だった。特に体 で優る佐々木は保坂にスプラッシュや変形ダブルアームスープレックス、のど 輪落としを見舞い、山崎との合体技も披露。若手コンビということでは伝説の 九州エキスプレス(江崎&雁之助)を越えるか? まだまだ負けられないベテ ランコンビは、大矢が山崎をニードロップ、延髄斬り、卍固めで追い込み、保 坂のラリアットを受けたバックドロップで投げ捨てる。最後は保坂がビルディ ングボムから山崎を押さえ込んだ。私はこういう試合がやっぱり好きですね。 一番、自分の知っているFMWらしい気がします。

レスリングですねえ。こういうの好きですやっぱり技の引き出しが多いというか


第4試合 ミルキー香里 VS 白鳥千香子

 今日一番ダメだった人がこのミルキー。白鳥ごときに格の差を見せつけられ ては。しかも、誤った憧れでバトン部に入部した太った中学生みたいで、全然 セクシーじゃない。100人中、95人くらいは白鳥の方がセクシーだと言う に違いない。少なくとも、そのはち切れそうな太股は長ズボンで隠しておくべ きだ。GAEAで長与エキスでも投入されたのか。
 中山は好きなレスラーだけど、エンターテイメントをやる素質は中山にはな いと断言していいだろう。エンターテイメントの素質って、持って生まれたサ ービス精神みたいなもんでしょうか。中山にはそういう想像力の広がりみたい なものがあまりないような。中山の資質はもっと別のところにある。大仁田や くどめに通じる浪花節の世界、心に直接訴える悲壮な姿こそが中山の生きる道 なのでは。エンターテイメント=TV的なバラエティ、という発想はあまりに 安っぽく、貧困ではないか。
 白鳥の方も顔はかわいいけど、試合は相変わらず。開始早々手を高く上げて、 身長の違いを見せつける。いつも同じことやってますね、白鳥さん。 中山とレフェリーの元川が突然白鳥相手に繰り出したダブルドロップキックは 沸いたものの、後は淡々と進み、中山がスウィングDDT、ジャーマン、雪崩 式フランケンシュタイナー。決め手のムーンサルトはかわされ、白 鳥のDDT、ロコモーションジャーマン、後頭部へのミサイルキック、最後は 裏拳で3カウント。中山は尾崎とか、できる人に相手してもらえばなかなかの ところを見せるけど、同じくダメの白鳥が相手では、試合が作れなかった。そ れ以上に体調が気になるところで、帰ってゆく時、かなり痛そうにビッコを引 いている。いつになったら、正調中山を僕らは見られるのか? がんばれ、中 山。君の華をもっと明るい気持で見たいから。

またやってるよふてぶてしいところも見せたがスウィングDDT。白鳥は受けるのも下手


セミファイナル 中川浩二、外道 VS サブゥー、スーパー・レザー

 久々のサブゥーはなおも、「らしさ」に満ちていた。いきなり4人で派手な 場外戦。タイトルマッチだって、レザーは水を撒くことを忘れたりはしない。 後はサブゥーが完全な主役。キャメルクラッチ、アラビアンプレス、豪快なト リプルステップ、プランチャ。一方的に中川、外道を攻めてゆく。しかし、た び重なる誤爆でレザーとの雲行きが怪しくなると、後は一気に炸裂。サブゥー の机でのモグラ叩きがレザーの頭に誤爆して、外道のスクールボーイにあやう く3カウントを取られそうになったレザーはサブゥーに掴みかかる。いがみ合 ってる隙を突き、コーナーから飛んだ外道がベルトでレザーを殴打、そのまま 押さえ込んで3カウント。試合後も収まらないレザーはサブゥーとイスでチャ ンバラを繰り広げた。
 中川、外道はこういう王者がいても良いかなという感じか。そこそこの試合。

何度も繰り返された誤爆。
レザーならずとも怒るよ
トリプルステップ外道がベルトで殴打。これがフィニッシュ


メインイベント ハヤブサ、田中将斗、黒田哲広 VS ミスター雁之助、金村ゆきひろ、非道

FMW★INGですねすさまじい勢いのハヤブサのニー田中にハシゴを投げつけた金村

 今日もFMW★ING(FMW正規軍と金村のエセW★INGの抗争時代を 指す)。もちろん、あの頃よりグレードは遥かに上がっている。巧くなってい るし、選手のキャラが立った。時代が一回りしたのかなという感じ。FMWの目指す 方向性としてはまったく正解なのだけど、もう自分とかはついていく必要もな いのかなとか、なんとなく感じてしまった。和みに生きるドインディーとかの 方が資質が合うかなと。もちろん、貶しているわけではなく、試合自体はもの すごく盛り上がり、スリリングなものだったけど。熱狂している自分より若い 人たちを見て、そんな風に感じた。
 ラダーマッチと銘打たれていたものの、ハシゴの出番はさほど多くなく、普 通のストリートファイトという感じ。6人が淀みなく激しい大技を繰り出して いく姿には、会場にいるほとんどのファンは日常のストレスを発散できるカタ ルシスを感じたことだろう。最初の標的になったのは非道。ハヤブサ軍の3人 の重い技を受けまくり、ピンチの連続に。会場の観客のほとん どはハヤブサ軍を支持していたものの、非道にはもう少しがんばれというよう な同情的な空気も多少感じられた。1回でも負ければ後がない田中も、中盤に ピンチ。南側通路でハヤブサと黒田のバロムワン攻撃が炸裂している間、田中 は金村のハシゴをフル活用した攻撃に3カウントぎりぎりで耐える。ハシゴを 頭にはめられ、そのハシゴをイスでぶっ叩く攻撃はすごく頭蓋骨に響きそうで、 正視に耐えなかった。
 ハヤブサ軍は黒田が肩車した非道をハヤブサのフェースクラッシャー+田中 のスタナーで叩きつける新合体殺法も披露。試合の頂点はハヤブサがファイヤ ーバードスプラッシュを非道に決め、返された後に繰り出したハシゴのてっぺ んからのムーンサルトである。客席の興奮は頂点 に達し、非道はなんとこれを返したものの、試合を決めたのはその直後に黒田 が放ったラリアットだった。確実にFMWのメインストリームに近づきつつあ る黒田を象徴するフィニッシュか。FMWファンであれば、このカードを見た だけで、非道が負けるだろうという予想がつくはずだ。実際、その通りになっ たわけであるが、非道が予想以上に粘ったために試合は見応えのあるものにな った。興行の前半で違和感を感じていたファンも、このメインで溜飲を下ろし たことだろう。
 もう一つの頂点は試合後。冬木が約束通りドッグフードを口に含む。そして、 ハヤブサに向かって吐き出した途端に両軍が大乱闘。その中で、袋のドッグフ ードをマットにぶちまける黒田や外道。ホールにドッグフードのなま暖かい匂 いが充満する。FMWが徹底して、そっちの方向へ行こうという意思表示に見 えた。しかしながら、ハヤブサは試合後の大団円に加わらず、1人帰ってしま う。ハヤブサの考えるプロレスと、この流れは相容れないものなのだろうか。 あるいはマスクを強制的に脱がされることに対する怒りか。結局、最後を締め たのは今のFMWの空気の中で、「王様」になりつつある黒田。「冬木、お前 はFMWじゃない。FMWとは俺達とFMWを応援するお客さんのことだ。ど うですか? お客さーん!」
 面白かったと思いながらも、拭いきれない違和感を抱えて、ホールを後にし た。「あの頃」のFMWから本当に遠いところに来てしまったな、と。

ファイヤーバードもいつも客を沸かせる技だハシゴからのムーンサルト。
フラッシュを浴びて、不死鳥のように光っています
最後は黒田が締めた


 トータルで成功だったんじゃないか? メインの沸きようはすさまじいもの があった。FMWは本当に腹をくくってますね。第1試合からメインまで、徹 底してエンターテイメントで突っ走るようだ。
 横浜文体以後、2回の後楽園大会を見た。現時点での感想は、「俺は好きじ ゃない。でも、FMWとしてはこれでいい」。個人的な好みとは別に、FMW の進む方向はこれしかないだろう。メジャーともインディーとも違うショーア ップされたプロレス。これで客が来るのなら、徹底的にやればいいことだ。
 侘び寂びのプロレスが見たいな。ハヤブサVS大矢が見たいな。これも昔の 夢か。時代が変わり、それとともに、プロレスもどんどん流れていくってこと だ。


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